二本のリアクションに分割されていましたが、ヴァイオラはAパート、Bパート両方に登場していたので、両方紹介します。
2nd-A
強奪者の黒幕を探る調査は証拠が見つからず、奪われた【月影DD】を追ってイリテュイア・リングに向かったハンターたちの捜査も進展がない。
ジョッシュは、O-FをSvDやサイボーグの脳と直結させる技術であるDD(ダイレクトドライブ)システムの欠陥……機体の受けたダメージが、そのまま同調しているパイロットにフィードバックされてしまう……を紹介し、機体の頭部を破壊すればパイロットである強奪者も脳死状態に陥るであろうことを指摘するが、その欠陥のせいで同僚を事故で失っているアルビオンは感情的な理由で反対する。そもそも、強奪者を殺してしまっては、黒幕の情報を得ることもできない。
その頃、【月影DD】を奪ってイリテュイア・リングに潜伏中の強奪者は、ハンターたちの捜索の手が厳しいせいで回収部隊の救援を得られないことを悟り、隠蔽を解いて捜索隊のハンターたちとの交戦を試みる。O-Fを駆って【月影DD】を取り押さえようとするハンターたちであったが、体術を駆使してDDシステムならではの機敏さを発揮する【月影DD】に翻弄され、取り逃がしてしまう。
その頃、MM(ムラクモ・ミレニアム)社のセレノス工場の技術者たちは、MM社製O-F【アレフ】が、EP社製のO-Fと互角に渡り合ったという報告(Bパート)に沸いていた。セレノス工場がMM社に離反する気配を感じ取ったMM社経理監査役モーリンは、状況から【アレフ】の勝利が偶然にすぎないことを見抜き、浮かれ騒ぐ技術者たちに冷たい視線を注ぐのであった。
2nd-B
【月影DD】のエネルギー切れを待つ作戦がハンターから提案されるものの、マザードライブを搭載するO-Fの搭載エネルギーは莫大なものであり、現実的ではないようである。また、次なる機体の強奪に備えるハンターは、【白雪】が人間用のDDシステムを搭載した機体で、次なる強奪者の標的になる可能性はあるものの、今のところはアルビオンしか動かせないのだという情報を得る。
一方、ベルク・リスタル(SS0329)が強奪したノーマルタイプの【月影】は、謎の大型O-F二機に拿捕されてしまう。途中、ハンターの駆るO-Fと交戦になるが、謎のO-Fは巨体に似合わぬ俊敏な動きでハンターらを翻弄し、ダメージを受けつつもチャフを撒いて逃走する。後に報告を受けたジョッシュは、謎のO-Fが、パイロットの四肢の動きをトレースするMTD(モーショントレースドライブ)システム搭載の複座型O-Fであると看破する。副操縦士を必要とするMTDシステムの開発は、EP社では一度却下されているのだが……。
謎のO-Fを開発していたのはMM社であった。【月影DD】と間違えられてMM社に回収された【月影】とベルクは、MM社セレノス工場の離反に巻き込まれる。MM社経理監査役モーリンは、監禁中のベルクと密かにコンタクトを取り、【月影】の奪取を持ちかける。
シャトル離発着場
「んあ〜。もうっ!」
頭を掻き毟りながら、ノエル・ギルスが休憩室に戻って来た。
ここはEP社が占有しているシャトル離発着場の一画、特設施設である。
周囲はまだ先だっての襲撃の傷痕を多く残し、いまだ全ての瓦礫、PDS の残骸の撤去は済んでいない。
ノエルは口をへの字に曲げたまま、休憩室内を見回した。目的の人物は、相変わらず窓辺でひとり佇んでいる。
長身黒ずくめの人物。これで手元に、ウィスキーの入ったの携帯ボトルでも持っていれば、まさしくマフィア映画のワンシーンのような雰囲気なのだが、さすがに昼前からは呑むほど常識外れではないようだ。
彼、ザヴィズン・ヴァビアはちらりと視線を向けて、不機嫌そうなノエルの姿を確認すると、ゆっくりと彼女に向き直った。
「収穫なしか?」
「ロクにないわね」
ノエルが自信たっぷりに答えた。
「よくあるパターンというかなんというか。家族を人質に取られて〜ってことみたいね。もっとも、その管制官の口座にはそれなりの金額が振り込まれてたみたいだけれど」
「脅し+買収か。他には?」
「なんにも。治安維持局の連中が問題の管制官を確保してあわせてくれないどころか、名前も教えてくれないのよ。これだけ聞くのがやっと。まあ、仕返しというか、そういうのを避けるためみたいだけれどね。その管制官も被害者みたいだし」
腰に手を当て、ふんっ! とノエルは息を吐き出した。
「それで、そっちは?」
「収穫なしだ。自爆した機体には搭乗者の痕跡なし。パイロットは逃亡して、もうどこかで何食わぬ顔をしているだろうな。PDSは旧式の機体をべースに、各企業のパーツの寄せ集め。機体を組む技術を無視すれば、インストリアのスクラップエ場で格安で手に入るような代物だ。破壊したPDSのパイロットは全員死亡。レダ族とステラマリス人、それと廉価SvD だ。見たところ、どこぞの反政府組織というところだな。身元はまず分からないだろう。市民登録してあるとは思えん」
「う〜ん、微妙に複雑な心境ってとこね。あの墜ちた輸送機は?」
ノエルが肩をすくめて見せる。ザヴィズンはレダ族、ノエルはミーア族なのだ。
「無人機だったらしい。EP 社製の部品に、MM 社製の外装。操縦系はCC 社だ。企業が反政府組織に手を貸している噂があるが、事実なんだろうな」
云いながらザヴィズンは懐から出したボトルの口をあけると、くいっと煽る。
「昼間からお酒?」
「ワインだ」
「お酒じゃないの」
「ワインが酒に入るか」
ニヤっと笑みを浮かべ、ザヴィズンはボトルを懐にしまった。
ノエルは顔をしかめると、窓の向こうに目をやった。ちょうど兵器開発局のロゴの入ったエルハンスに、誰かが乗り込むところだ。
途端、ノエルの顔色が変わった。
あのエルハンスのドライバー!あれは、ゴードン・マクニール!
O-Fテストパイロットであったゴードンの死亡は確認されている。そして、ゴードンに化けた何者かが、O-Fを奪取したことも連絡がきている。
ノエルは慌てて駆け出すと、いきなりザヴィズンに腕を掴まれた。
「待て」
「待てって、あそこにいるのは!」
「あれはレイスだ。例の犯人じゃない」
「は?」
ノエルが間の抜けた声を上げた。
窓の向こう、走っていくエルハンスには、ゴードンに変装したレイス・カルヴンクルスの姿が見える。
どうやら、いまノエルが行って来た管樹塔へ向うらしい。
「あの格好で探りをいれるそうだ。逆に治安維持局の連中に掴まらなきゃいいがな」
笑みを含みながらザヴィズンが云う。
「……よくレイスってわかったわね」
「さっき消し炭にしかけた」
どうやら一悶着あったらしい。
「さて、次のシャトルで俺たちもセレノスにあがろう。ここにいてももう無駄だ」
そういうとザヴィズンはノエルの脇を抜け、休憩室から出て行った。
「……お酒臭」
顔をしかめると、彼女も彼を追って歩きだした。
セレノスエ場【ゲート管理室】
(これからセレノスに上がるわね)
「はい、お気をつけて」
ヴァイオラ・ノインツィヒはノエルからの通信を切ると、首を傾げて考え込んだ。
どうも予想していたことと事態が微妙に違う。
ヴァイオラとしては、襲撃してきたパワードスーツ部隊が一度離発着場外へ逃走しておきながら自爆していることなどか
ら、なにかしら重要な手がかりがあるのではないかと踏んでいたのだ。だが寄せ集めの機体に搭乗者の所在は不明。どうやら目眩ましと、搭乗者の痕跡の隠滅目的でしかなかったようだ。
MM社の関与も噂されているが、ここまで事を派手に運んでまで奪取しようとするだろうか? 果たして、DD にそれほどの価値、秘密があるというのか?
意を決して、【白雪 】のデザイナーでもあるテムレ博士にも、O-F開発に関しての情報収集をしようと思っていたのだが、あの御仁、どうでもいいときには現われて改造の話を持ちかける割には、肝心な時にはちっとも掴まらないのである。
使えない親父でございますわね。
「どうしたんです? 難しい顔をして」
「あ、ご苦労様です。カーレル様」
ヴァイオラは室内に入って来たカーレル・ウィルゼスターに、礼儀正しく挨拶をした。
「まだ【鳳翼 】隊からの連絡はありませんか?」
「ええ、まだなにも」
「航続距離が長いというのも考え物ですね」
「ジョッシュ様が注意していたように、地上に墜ちていなければよいですわね」
ヴァイオラがにこやかに云った。
……相変わらず恐ろしいことをさらっといいますね、この方は。
「それで、先ほどはどうしてあんな顔をしていたんです?」
間われ、ヴァイオラは先ほどまで考えていた、MM社のよる技術強奪の噂についての考えをカーレルに話した。
実際、この強奪劇におけるもっとも有力な説でもある。
「これが企業闘争の一端とすると、恐ろしいですね。確かに、隠れ蓑とするにはもってこいですが。反ステラマリス勢力、アナクロニスティックの過激なグループは、自らの命を軽視しているように思えますから。まあ、彼らはそれを名誉と思っているようですけれど。そういう連中を焚き付け、自分たちの目的に利用していると考えると……」
「殉死ということでございますか?」
「そう。だが殉死といっても、不本意ながら命を落としたというのと、自ら進んで命を捨てるのとでは、その差は大きい。自爆テロが厄介なのは、知っているでしょう?」
確かに、死を名誉と考える者たちを相手にするのは、非常に厄介だ。
「それと、偽情報を流していたようですよ。【月影 DD】に関しては。それで連中の計画が狂ったともいえますね」
「偽情報?」
「大気圏突入能力があるという情報を流したそうです。ジョッシュが云っていましたよ」
「……なんでそんなことまで知っているのでござしょう? ジョッシュ様はテストパイロットでございましょう?」
ヴァイオラが問うた。
「そして、O-F開発技術者のひとり。実際に乗って確かめている内に、テストパイロットを兼任するそうになったそうですよ。
あ、やっと帰ってきましたね。あれは……ラサさんですね。話を聞いてきましょう。ここはお願いしますよ」
カーレルは戻って来た【鳳翼】を確認すると、格納庫へと降りていった。
そしてひとり残ったヴァイオラは再び考え込みはじめる。
「すると、犯人は奪取後地上に降りるつもりであったとも考えられますわね」
ですが【月彰DD】にその能力はなく、仕方無しにリングに潜伏、回収を待っているということでございますか。
……いずれにしろ、捕らえてみなくては考えるだけ無駄でございますわね。
セレノスエ場【ゲート管理室】
「ベルう〜。パカなことはやめて戻ってくるです〜。今ならきっと、皆さん許してくださいます〜」
リーンピア・オランヴォイスは手にした通信機にむかって、涙をポロポロと流しながら訴えていた。
だが返ってくるのは耳障りなノイズぱかり。
いまだステラマリスの技術では長顕離小型通信機などは造れず、せいぜい数百mの範囲にしか使えない。ということで、彼女のしていることはまったくの徒労ではあるのだが。
「だから、その通信機じゃ無理だって、こっちの――」
彼女を案内してきたジョッシュが、管理室の通信機に目を向け指差す――。
リーンピアはそのチャンスを逃がさなかった。
がっ!
彼女は通信機を床に叩きつけると踏みつけ、完膚なきまでに破壊する。
「浅ましゅうございますわね」
彼女のその様子に、このところこの管理室の主をしている、兎耳(一部では牛耳と呼ばれている)メイドSvD嬢がぼそりと眩いた。
彼女と、なかば彼女の相方になりっつあるセリアス・クレイドルは、部屋の隅に座っているため、ジョッシュたちは彼女たちがいることに気づいていないようだ。
「……見ない振りしてやれ。可哀想だから」
「ですが、限りなく黒に近うございます。犯罪者でございますわよ。ほとんど」
そういって容赦なく指をさした。
セリアスは顔をしかめた。
その顔には痛々しくも絆創膏が貼られている。この間の強奪騒ぎの際、銃弾で抉られた頬の再生化がまだ済んでいないからである。
いくらなんでも骨格パーツを剥き出しにしたままうろつくというのは、SvDのたしなみに反するというものだ。
ジョッシュは目をぱちくりとさせて、床に散乱した通信機だったものを見つめた。
「こ、こうなったら、ピーアが直接連れ戻すですぅ〜」
リーンピアは宣言すると、止めようとするジョッシュと争いはじめた。
正直、今の彼女が【月影】に乗るのは、とてつもなく危険な感じがする。
「……セリアス様、『電撃』を貸してくださいまし」
「どうするんだ?」
セリアスから受け取るやいなや、彼女はリーンピアに電撃をぶちかました。
リーンピア、自慢の髪を爆発させて昏倒。
「……うわー。容赦しないのな」
すっかり気絶したリーンピアの、すごいことになっている髪を摘みながら、ジョッシュが身を震わせた。
「監察官でございますから」
「恐いなあ、バッテラちゃん」
ジョッシュの呼ばれ、顔が強張った。
「その名前で呼ぱないでくださいまし」
「でも、もう工場内じゃそっちで定着してるぜ。あ、セリアス、お前【雷吼】のパイロットに漏れたんだよな。【剣刃】と、ちょうど今【月影】に空きができたぜ」
「じょ、ジョッシュ様、話を変えないでくださいまし。どうにか訂正する方法を……」
彼女もジルコン同様に必死だ。
すると、セリアスがポンポンと彼女の肩を叩くと、静かにこう云った。
「可哀想に」
リーンピアさんとベルクさんのプレイヤーが誰かは一応知っているのですが、双方のプレイヤーさんのサイトを拝見する限り、どうやら非公開で参加したい様子なので黙っておきます。
プレイヤーが受け取ったのはAパートのリアでしたが、Bパートにもヴァイオラらしきキャラが、Aパートとは繋がりのない場面でしっかり登場していました。名前は伏せられていますが、(別にテムレ博士がヴァイオラのそっくりさんを作っていたという訳でもく)どこからどう見てもヴァイオラ本人の描写ですな。
(教えてくれたセリアスさん、ベルクさん、ナッツさん、マロニエさん、ありがとうございました)
HGシリーズなどであれば「ヴァイオラ・ノインツィヒ(AパートPC)」なんて感じに名前出る場面なのかも知れませんね。なぜ両方のリアに登場していたかは……確かにベルクさんのことはアクション中で一言触れてますけど、どちらかと言うと前回のアクションでの絡みもあって、使いやすいキャラだったということなのかも。
疑わしきは即罰、とばかりに電撃食らわせてしまったピーアさん、ごめんなさい。
■目的
強奪者の黒幕を捜査
■動機
他企業による技術強奪が目的にしては、手口が派手すぎて、割に合わない気がするので
■プロット
黒幕に結びつく幾つかの手がかりは、まだ残されておりますわ。回収されていたと思われる宙港の管制官を(自殺したりしていなければ)取り調べたり、自爆したパワードスーツの部品から製造元や持ち主の経歴などを調べたりすることができるかも知れません。ただ、一度逃走した機体を含め、パワードスーツが全て自爆している点が引っかかりますわ。
(1) 非常に忠誠心の高いメンバーを揃えていた。
(2) 命令に逆らえないSvDであった。
(3) 自爆装置を積まれていたことを知らされていなかった。
(4) 一種の催眠術をかけられていた。
今回の事件にはMM社との関与が噂されておりますが、仮に(3)(4)だとすれば、依頼主のMM社は企業のイメージを下げてしまうのではないでしょうか。私には、不誠実な依頼人の仕事を請けようとするのは非論理的なことに思えます。EP社を恨んでいる人間は、こういう場合でも「MM社と殉職したパイロットたちはよくやった」と考えるのでございましょうか? 強奪された二機の【月影】(<ベルクさんの行動によっては混乱させられるかも)には、そこまでの秘密があるのでございましょうか。気は進みませんが……テムレ博士にも尋ねてみることにいたします。
きな臭い情報、例えば、実はMM社が超強いO-Fを独自開発していて、O-Fをおびき寄せてデモンストレーションを行うのが真の目的であるとか、罠である傾向が判明した場合、早めの段階で、イリテュイア・リングで捜索に当たっているメンバーに警告することにいたしますわ。